練習問題
ヒゲオ
「新しい公式を見つける練習じゃ!」
ピョン
「へぇ〜!……うまくできるかな?」
ペンタ
「大丈夫!やってみよう!」
発見学習の基礎練習1
ここでは、実際に新しいことを発見するための練習をしましょう。
ここでは問題を解くのではなく、変形します。
練習として新しいアイデアを考えてみてください。考えてもらったあとで、私達が考えたアイデアを見せます。
サイコロのゲーム
日本に昔からあるゲームに次のようなものがあります。
サイコロを2つ振り、目の和が偶数なら丁、奇数なら半とよぶ。
参加するプレイヤーは丁と半のどちらかに賭けて、振られたサイコロの丁半と一致すると、そのプレイヤーは勝つ。(お金を賭けている場合は、2倍になる)
この問題を今から変形しましょう。まず、次の問題文において、変形できる箇所に下線を引いてみてください。
サイコロを2つ振り、目の和が偶数なら丁、奇数なら半とよぶ。参加するプレイヤーは丁と半のどちらかに賭けて、 振られたサイコロの丁半と一致すると、そのプレイヤーは勝つ。(お金を賭けている場合は、2倍になる)
さて思いつきましたか?
数字を変える
この問題の変形としてすぐに考え付くのは次の色のついた部分でしょう。例えば、サイコロの個数を3以上にすることです。
ただし、ここを変えても、問題は大きくは変わりませんが、それでも変えてみることは意義があります。
サイコロを3つ振り、目の和が偶数なら丁、奇数なら半とよぶ。参加するプレイヤーは丁と半のどちらかに賭けて、振られたサイコロの丁半と一致すると、そのプレイヤーは勝つ。
他に思いつきますか?
この問題の変形として次の赤の部分もあり得ます。ここを変えると、問題は大きく変わります。
サイコロを3つ振り、目の和が素数ならP、素数でないならQとよぶ。参加するプレイヤーはPとQのどちらかに賭けて、振られたサイコロのP,Qと一致すると、そのプレイヤーは勝つ。
題材を変える
他に思いつきますか?
次のような変形では問題は大きく変わります。実は、この変形は不思議な現象へと繋がります。
トランプを2枚引く、カードの数字の和が偶数なら丁、奇数なら半とよぶ。参加するプレイヤーは丁と半のどちらかに賭けて、 振られたトランプの丁半と一致すると、そのプレイヤーは勝つ。
2つのサイコロA,B使うとします。
(i) 和が偶数になるのは次の2つです。
(a) 両方が偶数の場合 確率 1/4
(b) 両方が奇数の場合 確率 1/4
(ii) 和が奇数になるのは次の2つです。
(a) Aが偶数で、Bが奇数の場合 確率 1/4
(b) Aが奇数で、Bが偶数の場合 確率 1/4
したがって、サイコロ2つのときは、和が偶数になるのは1/4 + 1/4 = 1/2で、和が奇数になるのは1/4 + 1/4 = 1/2となり、同じです。
3つのサイコロA,B,C使うとします。偶数をE (even),奇数をO (odd)として、サイコロのA,B,Cの順に書くと、次のようになります。
(i) 和が偶数になるのは次の4つです。
(a) EEE 確率 1/8
(b) EOO 確率 1/8
(c) OEO 確率 1/8
(d) OOE 確率 1/8
(ii) 和が奇数になるのは次の4つです。
(a) OOO 確率 1/8
(b) EEO 確率 1/8
(c) OEE 確率 1/8
(d) EOE 確率 1/8
したがって、サイコロ3つのときは、和が偶数になるのは1/8 + 1/8 + 1/8 = 1/2で、和が奇数になるのは1/8 + 1/8 + 1/8 = 1/2となり、同じです。
実は、サイコロを多くしても、和が偶数になるのと、奇数になるのは同じになるのです。証明を試みてもよいでしょう。
サイコロを3つ振り、目の和が素数ならP、素数でないならQとよぶとします。このとき、サイコロの目は6 X 6 X 6 =216です。その中で、素数は3, 5, 7, 11, 13, 17で、出る回数は73です。
したがって、確率は73/216 = 0.337963となります。
なお、サイコロの個数を増やしていくと、結構面白そうなことがおきそうなのです。私達もまだちゃんとやっていません。
発見学習の基礎練習2
ここでは問題を解くのではなく、実際に変形してみましょう。
石取りゲーム
机の上に、碁石が10個ある。2人のプレイヤーが交互に3個以内の碁石を取り、自分の番で石の個数を0にしたら、そのプレイヤーが勝つ。
先手と後手のどちらに必勝する方法があるか。そして、その方法はどんなものか。
この問題を今から変形しましょう。まず、変形できる箇所に下線を引いてみてください。
机の上に、碁石が10個ある。2人のプレイヤーが交互に3個以内の碁石を取り、自分の番で石の個数を0にしたら、そのプレイヤーが勝つ。 先手と後手のどちらに必勝する方法があるか。そして、その方法はどんなものか。
さて思いつきましたか?
この問題の変形としてすぐに考え付くのは次の赤の部分でしょう。碁石の個数を10以外にするとか、一度に取れる個数を3個以外にすることもできます。 ただし、ここを変えても、問題は大きくは変わりませんが、それでも変えてみることは意義があります。
変形1、2
机の上に、碁石が10個ある。2人のプレイヤーが交互に3個以内の碁石を取り、自分の番で石の個数を0にしたら、そのプレイヤーが勝つ。 先手と後手のどちらに必勝する方法があるか。そして、その方法はどんなものか。
さて他に思いつきませんか?少し難しいかもしれません。
この問題の変形として次の赤の部分も可能でしょう。ここを変えると、問題は大きく変わります。3人プレーにすると、問題はかなり難しくなります。
変形3
机の上に、碁石が10個ある。3人のプレイヤーが交互に3個以内の碁石を取り、自分の番で石の個数を0にしたら、そのプレイヤーが勝つ。 先手と後手のどちらに必勝する方法があるか。そして、その方法はどんなものか。
さて他に思いつきませんか?ここまでくると、かなり難しいかもしれません。
この問題の変形として次の赤の部分も可能でしょう。ここを変えるとすると、例えば石の個数を0にしてしまったプレイヤーが負けることにすることもできます。
変形4
机の上に、碁石が10個ある。2人のプレイヤーが交互に3個以内の碁石を取り、自分の番で石の個数を0にしたら、そのプレイヤーが負ける。 先手と後手のどちらに必勝する方法があるか。そして、その方法はどんなものか。
さて他に思いつきませんか?ここまでくると、さらに難しいかもしれません。
この問題の変形として次の赤の部分も可能でしょう。二人をA,Bとして、A,B,B,A,B,A,A,B,...というような順番もあり得る。
変形5
机の上に、碁石が10個ある。2人のプレイヤーが交互に3個以内の碁石を取り、自分の番で石の個数を0にしたら、そのプレイヤーが勝つ。 先手と後手のどちらに必勝する方法があるか。そして、その方法はどんなものか。
さて他に思いつきませんか?ここまでくると、 さらに難しいかもしれません。でも良い方法があります。実際に碁石を使ってみるのです。人間は自分の手で何かを扱うと良いアイデアが生まれます。
石を手で触ってみると、いろいろ思いつくはずです。やってみてください。
変形6
机の上に、碁石10個の山と碁石9個の山がある。2人のプレイヤーが交互に3個以内の碁石を取り、自分の番で石の個数を0にしたら、そのプレイヤーが勝つ。 先手と後手のどちらに必勝する方法があるか。そして、その方法はどんなものか。
この種の問題は色んなパズルや数学の本に掲載されています。 ここで紹介している変形は、既にこれまでの石取りゲームの研究の歴史の中で提案されてきています。
答 先手のプレイヤーをA, 後手のプレイヤーをBとする。
この問題では先手Aに必勝法がある。Aがまず石を2個取る。 Bが1個か2個か3個取ると、それに応じて、Aは3個か2個か1個取ると、残る石は4個になる。 また、Bが1個か2個か3個取ると、それに応じて、Aは3個か2個か1個取ると、石の個数は0となり、Aが勝つ。
問題の変形のやり方で一番簡単なのは、机の上にある碁石の数を変えることでしょう。
変形1 机の上に、碁石が12個ある。2人のプレイヤーが交互に3個以内の碁石を取り、自分の番で石の個数を0にしたら、そのプレイヤーが勝つ。 先手と後手のどちらに必勝する方法があるか。そして、その方法はどんなものか。
答 先手のプレイヤーをA, 後手のプレイヤーをBとする。
この問題では後手Bに必勝法がある。Aがまず石を1個か2個か3個取ると、それに応じてBが3個か2個か1個取る。 残りは8個になる。次に、Aが1個か2個か3個取ると、それに応じてBが3個か2個か1個取る。残る石は4個になる。 また、Aが1個か2個か3個取ると、それに応じて、Bは3個か2個か1個取ると、石の個数は0となり、Bが勝つ。
上の2つの問題のように、初めに、机の上にある石の数が一度に取ることができる石の数に1を足した数の倍数だと、後手Bの必勝、そうでないと先手Aの必勝となります。
一度に取れる石の個数を変えてみると次のようになります。
変形2 机の上に、碁石が12個ある。2人のプレイヤーが交互に4個以内の碁石を取り、自分の番で石の個数を0にしたら、そのプレイヤーが勝つ。 先手と後手のどちらに必勝する方法があるか。そして、その方法はどんなものか。
答 先手のプレイヤーをA, 後手のプレイヤーをBとする。
この問題では先手Aに必勝法がある。Aがまず石を2個取る。残りは10個になる。 Bが1個か2個か3個か4個取ると、それに応じて、Aは4個か3個か2個か1個取ると、残る石は5個になる。 Bが1個か2個か3個か4個取ると、それに応じて、Aは4個か3個か2個か1個取ると、残る石が0になり、Aが勝つ。
変形3 机の上に、碁石が10個ある。3人のプレイヤーが交互に3個以内の碁石を取り、自分の番で石の個数を0にしたら、そのプレイヤーが勝つ。 先手と後手のどちらに必勝する方法があるか。そして、その方法はどんなものか。
3人のプレイヤーにすると、ゲームはかなり複雑になります。そもそも3人がどのようにプレーするかが問題となります。 例えば、自分が勝てないとわかったときに、残りの2人のうちでどちらの方の味方をするか。それが決まらないと、戦略を決めることができません。
変形4 机の上に、碁石が10個ある。2人のプレイヤーが交互に3個以内の碁石を取り、自分の番で石の個数を0にしてしまうと、そのプレイヤーが負ける。 先手と後手のどちらに必勝する方法があるか。そして、その方法はどんなものか。
石の個数を0にした方が勝つタイプのゲームとの違いは、残りの石の個数を1個にしたら勝つということだけです。
変形6 机の上に、碁石10個の山と碁石9個の山がある。2人のプレイヤーが交互に3個以内の碁石を取り、自分の番で石の個数を0にしたら、そのプレイヤーが勝つ。先手と後手のどちらに必勝する方法があるか。そして、その方法はどんなものか。
答 先手のプレイヤーをA, 後手のプレイヤーをBとする。
この問題では先手Aに必勝法がある。Aがまず碁石10個の山から石を1個取る。残りは碁石9個の山が2つになる。 Bがどのようにとっても、Aは2つの山の石の個数を同じにできるので、やがてAが石の数を0にして勝つ。